江戸切子の歴史と巧みな技の数々 >  文様パターン > 文様パターン

 文様パターン

文様パターン

江戸切子の表面に刻まれる文様は今や様々です。よく見かける伝統文様から、現代的な意匠のものまであり、一見、メーカーや、作家さんの好きに彫っているかのようにすら見えます。しかし、江戸切子においては、文様や、その連続性に歴とした法則性があり、各々の意匠に意味があります。これは、同じ民衆の生活から生まれた江戸小紋や、刺し子、襖絵や欄間の透かしにも通ずるもので、素材は違えど、文様に込める願いは和服も切子も変わりません。
よくよく見ると、市松模様など西洋の建築や被服にも見受けられるものがあったり、逆に、今にはない新鮮味のあるものであったり。江戸切子を見たり集めたりする楽しみは、ある意味、伝統文様を集める楽しみであるのです。一つ一つのルーツを学ぶとより一層楽しめますので、ご紹介してみましょう。贈り物などの際、参考にしてみてもいいかもしれません。

江戸切子に使われる文様は、簡易な直線、まれに、曲線の組み合わせでできています。これは硝子面を鑢で削るので、どうしても平易でなければならないことと、文化の構成を担っていた町人の好みが、すっきりと勢いのよいものだったことに関連します。同じ紫でも、赤みを帯び、艶かで華美ともいえる京紫に比べ、青みを帯びた大人しい江戸紫の違いが出るなど、江戸時代の三大都市、京、堺、江戸の好みははっきりと違っていました。
ベーシックな模様としては、魚子、籠の目、矢来、格子、笹の葉、麻の葉模様、星、七宝、流水などがあり、これらを組み合わせて多種多様な効果を生み出します。各々の特徴と意味をあげてみましょう。
魚子……光を当てるとキラキラ光る小さな文様。読んで字のごとく魚の鱗を表すとするものもあるが、魚卵が連なった姿が語源であるとされます。魚子の他に、斜子とも。彫金の世界でも用いられることの多い文様です。
籠の目……切り出す線の数によって印象が変わる文様です。八角、六角などがあり、伏せた籠の目を模した模様です。よくないものが家中に侵入しないように魔除けの役目を果たします。
矢来……矢のように降る雨を表したもの。交差する直線で構成されます。矢来という言葉は、他にも、家などを囲む竹や木でできた垣根を表すこともあります。
格子……いわゆるチェック。中でも市松文様は有名で、明暗、色の違う小さな正方形を連ねて構成されます。モダンな印象で着物の柄としても人気が高い。
笹の葉……放射状に延びた直線模様。他の文様と組み合わされることも多い。笹は身近な植物で、刀の切れ味の喩にも用いられます。笹の雪はすぐ落ちてしまうため、すぐに相手を切れることの形容です。
麻の葉……交差する何条かの直線と周りを囲む短い直線で構成されます。麻は、成長が早いため、子供がすくすくと育つようにという願いを込めて用いられます。
星……八菊とも言われます。縦横とそれを貫くように斜めの線、計8本が交差します。
七宝……円形を四分の一ずつ連ねて網状にしたもの。中央に他の文様を組み合わせることも多い。七宝とは仏教用語で、七つの宝を表しますが、経文によってその内容が変わります。
流水……小川を表します。流れるような大胆な曲線が特徴。切子としては珍しい文様ですが、他の文様と組み合わされていることがあります。和服で好まれる文様でもあります。

一つの文様だけを用いるときと、幾つかの文様を組み合わせるときがあります。笹の葉模様と籠目模様など。使う文様の数が多ければ多くなるほど、面積は増え、彫刻の難しさは増していくのです。こういった文様は、江戸切子ばかりではなく、私たちの身近なこものにもありますので、ぜひ探してみてください。